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2022/07/10 22:13
若い頃は宝飾品にあまり関心がなく過ごして来ましたが、アンティークのアメシストとダイヤモンドに出会い衝撃を受けました。
アメシストの瑞々しい紫色のバリエーション。
ダイヤモンドの陰影のある雫の様な煌めき。
特にアンティークのダイヤモンド、「オールドカット」と括られるものの中で、ローズカット、オールドマインカット、オールドヨーロピアンカットに魅了されました。
ローズカットは氷砂糖の粒のようで、時折、ハッとする輝きがあり、オールドマインカットは、いびつなカット面(ファセット)を持つ陰影のある煌めき、オールドヨーロピアンカットは、少し洗練された面持ちが有ります。
簡単な図とともに、ダイヤモンドのカットについてみていきたいと思います。
【ローズカット】
先端に向かって三角形、薔薇の蕾の様に見えるカット。17世紀にオランダで完成したといわれています。
面からの反射光を楽しむカット法。ブリリアントカットが登場するまで、ダイヤモンドのカットの主流でした。
時折、鋭利な煌めきを放ち、小さいダイヤモンドでも存在感が有ります。
【オールドマインカット】
ブリリアントカットのごく初期のもの。クラウン部分が小さく、パビリオン部分が深い。キューレット部分が広いのも特徴。ダイヤモンドが貴重だった時代に、できるだけ重さを残そうとして考案されたカット方法とのこと。ぽってりと可愛らしい印象。
【オールドヨーロピアンカット】
19世紀末、新たなブリリアントカットとして登場。ダイヤモンドが市場に豊富に出回るようになり、一層の輝きを求めて考案されたカット方法。トップのテーブル面が狭く、クラウンに厚みが有り、パビリオンも深いのが特徴。キューレットの面は小さくなっています。
1860年代に南アフリカでダイヤモンド鉱山が発見され、ダイヤモンドが市場に出回る量も増えていきました。それとともにダイヤモンドをカットする技術も向上していきます。専門の職人さんが一つひとつカットしていったダイヤモンドは、現代の完成されたブリリアントカットとはまた違う温かみが有ります。
手前の写真は、今週土曜日販売予定のリングです。光をよく取り込めるように、細い爪で掲げるようにセットされています。奥二つは、現在ショップで販売中のリング。
真ん中はエドワード朝に流行したプラチナを石座に使ったもの。1920年頃、プラチナの主な産地のロシアの埋蔵量が減った事と、扱いやすいホワイトゴールドの登場により、1936年頃には西欧では、一般的なプラチナのジュエリーの姿は見られなくなったといいます。素材により、ある程度時代特定できるリングです。
奥はゴールドとは別の素材(プラチナかホワイトゴールド)をダイヤモンドの縁取りに使い、一体感を出し、輝きを増すようにつくられたものです。
手前は古いデザインのものですが、ホールマークを検証した所、3ともほぼ同時代位のものではと思われます。
全て18金ですが、リングの色味は微妙に異なります。
オールドカットのダイヤモンドは、陰影の有る独特の輝きで、朝、昼、夜と表情を変えるので見飽きません。
どこかいびつな煌めきは、炎を見ている時のような温かな安心感を覚え、とても癒されます。
一つとして同じものがない、オールドカットのダイヤモンド。是非、お気に入りを探してみて下さい。
(それぞれ動画を載せています。宜しければご覧下さい。)
参考文献(敬称略):
「ダイヤモンド・ジュエリー」(別冊太陽)2008年 株式会社平凡社
「アンティークと20世紀のジュエリー」戸井田正己著 2007年4版 柏書店松原株式会社
「ジュエリー・バイブル」水野孝彦・景山公章・石崎文夫著 2000年6版 株式会社美術出版社